メディアにセンセーショナルに取り上げられる高齢ドライバーによる重大交通事故。日頃は慎重かつノロノロ運転という高齢者が、猛スピードで信号を無視して、歩行者をはねてしまう。あるいは自損事故を起こし自らの命を絶ってしまう。メディアや世間は、高齢者の運転を危険視し、ひたすら免許の自主返納を促す風潮が続いている。長年、高齢者医療の現場に身を置いてきた著者は、そんな交通事故の背景には、高齢者が服用している薬による意識障害があるのではと指摘し、免許返納を考える前に、今一度、服用している薬の副作用のリスクを点検する必要性を説く。我が国に蔓延する、高齢者の多剤服用と、そのことが及ぼす深刻な影響を考える。